こんにちは、しゅのと申します。
この記事では、人気楽曲であるVaundyさんの「怪獣の花唄」(1番)のコード進行について分析し、ポイントを解説していきます。(作詞:Vaundy 作曲:Vaundy)
原曲はこちら↓
本記事は、音楽理論の基礎を学んだことで、ギターの楽しさが飛躍的にアップした凡人ギタリストによるコード進行分析の備忘録となります。
コード譜については、以下記事を作成しております。コード譜の全容、使うコードの押さえ方についても解説しているので、本記事とあわせてご覧ください。
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また、お気に入りの音楽理論入門書を紹介します。とてもわかりやすく、楽しく音楽理論の学習を進めることができます!非常にオススメな本です。
※記事の内容には細心の注意を払っていますが、分析違いや解釈の相違が発生する可能性も十分にございます。あくまで一個人の見解であることをご留意いただけますと幸いです。
「怪獣の花唄」コード進行分析
まずは、キー(Key)とダイアトニックコードを確認します。そして、パートごとに分けてコード進行を分析していきます。
キー(Key)とダイアトニックコード
コード進行の分析にはこの2つは欠かせません。
これらがわかることで、コードを度数(ディグリー)で理解することができ、すべてのキーで汎用的にコード進行を分析することが可能となります。
この曲のキー(Key)は「Dメジャー(=Bマイナー)」です。
「キー=Dメジャー」の『平行調』は「キー=Bマイナー」です。本記事では、分析をし易くするためにメジャーキーで考えていきます。
三和音、四和音のダイアトニックコード一覧を表に示します。
● ダイアトニックコード(Key:Dメジャー)
Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶm-5 |
D | Em | F#m | G | A | Bm | C#m-5 |
ⅠM7 | Ⅱm7 | Ⅲm7 | ⅣM7 | Ⅴ7 | Ⅵm7 | Ⅶm7-5 |
DM7 | Em7 | F#m7 | GM7 | A7 | Bm7 | C#m7-5 |
それでは、コード進行を見ていきましょう。
度数表記とは?
「コード進行を度数・ディグリー表記で理解する方法」について、基本的な内容をまとめた記事を作成しています。「度数表記ってなに?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください。
Aメロ
まずは「Aメロ」からです。
[通常表記](♪思い出すのは〜)
|Dsus2/G |%|Dadd9/F#|%|
|Dmadd9/F|%|Dadd9/F#|%|×2
キー(Key)がDメジャーでダイアトニックコードに当てはめて考えると、度数(ディグリー)表記は次のようになります。
[度数表記](♪思い出すのは〜)
|Ⅰsus2/Ⅳ |%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅰmadd9/♭Ⅲ|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|×2(最初からここまでを繰り返し)
この曲はイントロ無しで、ド頭から歌い始めるような構成となっています。まずは、Aメロから見ていきましょう!
Ⅰsus2/Ⅳ →Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅰmadd9/♭Ⅲ→Ⅰadd9/Ⅲ
一旦、ベース音は置いておいて、分子のコードを見ていきます。「Ⅰsus2、Iadd9、Imadd9」があることがわかります。
Isus2・Iadd9・Imadd9
[度数表記](♪思い出すのは〜)
|Ⅰsus2/Ⅳ |%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅰmadd9/♭Ⅲ|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|×2(最初からここまでを繰り返し)
ダイアトニックコードの主音である1度のコードのsus2(サスツー)とadd9(アドナインス)です。
- sus2は三和音のコードの3度の音を長2度(M2)に変更したコード
- add9は三和音のコードに9th(長2度(M2))をプラスしたコード
sus2、add9のコードを使うことで、本来1度のコードには入っていない長2度(M2)の音がAメロを通してずっと鳴っていることになります。
これらのコードによって、素直に1度のコードを使う時と比べて、浮遊感を演出することができていると感じました。
また、sus2コードは明暗を分ける3度を含まないコードであり、このコードで曲が始まることで明暗どちらとも取れるようなミステリアスな雰囲気を漂わせており、曲の掴みを強化することに成功していると考えられます。
sus2コードは明暗を分ける3度の音を含まない
Imadd9のIm
[度数表記](♪思い出すのは〜)
|Ⅰsus2/Ⅳ |%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅰmadd9/♭Ⅲ|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|×2(最初からここまでを繰り返し)
ここで、「Imadd9」の「Ⅰm」に注目します。
本来1度のコードはメジャーコードです。そのため、この「Imadd9」は同主短調のDマイナーキーのダイアトニックコードからの借用と考えられます。
同主短調:あるメジャーキーから見て、主音が同じマイナーキーのこと
(例:Bメジャーの同主短調はBマイナー、Gメジャーの同主短調はGマイナー)
このように別のキー(調)からコードを一時的に借りて使用することを「借用」と呼びます。
キー(Key)がDマイナーのダイアトニックコードは次のようになります。このImのコードを借用していると考えられます。
Ⅰm | Ⅱm-5 | ♭Ⅲ | Ⅳm | Ⅴm | ♭Ⅵ | ♭Ⅶ |
Dm | Em-5 | F | Gm | Am | B♭ | C |
また、歌詞とのリンクで考えると、以下マーカー部分でマイナーコードの暗い感じを与えることで、登場人物の少し「不安そうでしょげているような感情」を聴きてに与えられるように感じます。
どこに行ってしまったの いつも探すんだよ
怪獣の花唄 / Vaundy
「Ⅳ→Ⅲ→♭Ⅲ→Ⅲ」のベースライン
[度数表記](♪思い出すのは〜)
|Ⅰsus2/Ⅳ |%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅰmadd9/♭Ⅲ|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|×2(最初からここまでを繰り返し)
続いて、ベース音に注目して見ます。
ベース音:そのコードの一番低い音
Ⅳ → Ⅲ → ♭Ⅲ → Ⅲ
と、半音繋ぎで滑らかに進行していることがわかります。
実際に、ギター指板上でコードの押さえ方を見てみると次のようになります。6弦のベース音が「G→F#→F(Ⅳ→Ⅲ→♭Ⅲ)」と1フレットずつ半音で移動していることがわかります!(※ギターを弾かれない方はこちらの内容はスルーしてください)
こちらは色々な曲で使われている手法です。聴いてもらえると分かりますが、人間の耳は半音繋がりの進行を滑らかで心地よいものに感じる人が多いです。そのため、心地よく感じる進行となっています。
一見するとややこしくて複雑な進行に見えましたが、このベースラインを実現するためにオンコードが使われていることがわかりました。
オンコード:コードのベース音(最低音)を本来の音とは異なる音に変えたコード
(例:G/B、C/Eなど。分子のコードの最低音を分母の音にする)
Bメロ
続いて「Bメロ」です。コード進行は以下です。
[通常表記](♪でも最後に見たいのは〜)
|Em7|%|Dadd9/F#|%|
|Gadd9|%|A|%|
[度数表記](♪でも最後に見たいのは〜)
|Ⅱm7|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅳadd9|%|Ⅴ|%|
「Bメロ」は「Aメロ」とはうって変わって、比較的素直な進行です。
「Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴ」のベースライン
[度数表記](♪でも最後に見たいのは〜)
|Ⅱm7|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅳadd9|%|Ⅴ|%|
Ⅱm7 → Ⅰadd9/Ⅲ → Ⅳadd9 → Ⅴ
ベース音に注目すると、Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴと『メジャースケール』を1音ずつ駆け上がっていることがわかります。
このベースラインによって、Ⅱm7から始まり「サビに向けての盛り上がり」を演出する作りになっていると感じました。
ここで、『メジャースケール』について知らない方もいると思いますので、少し解説します。個別で解説記事を作成しているので、よく知らないなという方は参照いただけますと幸いです。
メジャースケール:キーの中で使われる7つの音階
「キー:Cメジャー」の場合はCDEFGABC(ドレミファソラシド)
度数で表すと「1, M2, M3, 4, 5, M6, M7」
「全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音」の並び順になっていると説明される内容です。
ここで『メジャースケール』について細かい話をすると大変なので、詳細は以下記事をご覧ください。
Ⅰadd9/Ⅲ・Ⅳadd9
[度数表記](♪でも最後に見たいのは〜)
|Ⅱm7|%|Ⅰadd9/Ⅲ|%|
|Ⅳadd9|%|Ⅴ|%|
また、「Aメロ」の時にも述べましたが、add9コードを効果的に使用することで、普通のダイアトニックコードを使う時と比べて「浮遊感や期待」を演出することができているように感じます。
サビ
最後は、いよいよ「サビ」です。コード進行は次のようになっています。
[通常表記](♪もっと騒げ怪獣の歌〜)
|Gadd9|A|Bm7|Dadd9/F#|
|Gadd9|A|Bm7|D|
|Gadd9|A|Bm7|Dadd9/F#|
|Gadd9|A|D|%|
[度数表記](♪もっと騒げ怪獣の歌〜)
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰadd9/Ⅲ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰadd9/Ⅲ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅰ|%|
サビも引き続きかなり素直な進行となります。add9を使っていること以外は、かなり直球勝負の進行です。
Ⅳadd9→Ⅴ→Ⅵm7→Ⅰadd9/Ⅲ
[度数表記](♪もっと騒げ怪獣の歌〜)
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰadd9/Ⅲ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰadd9/Ⅲ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅰ|%|
「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ」のJPOPやロックなどで多用される超有能なコード進行ですね。
「Ⅰadd9/Ⅲ」でベース音が「Ⅲ」となっていますが、その次のコードの「Ⅳadd9」に対して、ベース音が「Ⅲ→Ⅳ」と滑らかに繋がるようになっています。
サビ前半最後のⅠメジャー
[度数表記](♪もっと騒げ怪獣の歌〜)
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰadd9/Ⅲ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅰadd9/Ⅲ|
|Ⅳadd9|Ⅴ|Ⅰ|%|
また、サビの折り返し地点は転回形のオンコードではなく、「Ⅰ」をそのまま使用しています。
「Ⅰ」の終始感、安定感によって、一旦サビ前半で区切りをつけて最後のサビに向けて期待感が高まっていくようなイメージを演出しているように感じました。
まとめ
まずは、ここまでお疲れ様でした。
Vaundyさんの「怪獣の花唄」のコード進行についてギタリスト目線で分析をしてみました。
- sus2・add9の9th(M2)の音
- 同主短調からの借用
- 「Ⅳ→Ⅲ→♭Ⅲ→Ⅳ」の半音繋がりのベースライン
- 「Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴ」のダイアトニック内の順次的なベースライン
を中心に、「テクニカルな技」から「シンプルなコード進行での魅せ方」まで持ち合わせており、技巧とシンプルのバランスが素晴らしい曲であると再認識しました。
私も「add9」を上手く使いこなせるようになりたいと思いました。
まだまだ、勉強中の身ですが、この調子でどんどんコード分析に挑戦していこうと思います。(興味のある方はぜひ一緒に挑戦しましょう!)
記事冒頭でも述べましたが、以下は音楽理論の学習におすすめの作者の本です。私はこの方の説明でかなり理解が進んだので、非常にお気に入りです。気になる方は、ぜひ参考にしてみてください!
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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