要点まとめ
曲のキー(調)とは、楽曲の音楽的な「基準音」と「音階の種類」を示すものです。例えば「キーC」なら「ドを中心とした長調の音階」を意味します。
ギタリストにとってキーを理解することで、コード進行の予測、効果的なソロ演奏、他の楽器との合奏が格段に向上します。キーは楽曲の「音楽的な住所」として機能し、演奏の方向性を決める重要な要素です。
キーの基本定義と考え方
キーとは何か
キー(調)は音楽において「楽曲の中心となる音」と「その音を基準とした音階の種類」を組み合わせたものです。音楽理論では「調性(トナリティ)」とも呼ばれます。
キーは以下の2つの要素で構成されます:
- 主音(トニック): 楽曲の中心となる音(例:C、G、Fなど)
- 調性: 長調(メジャー)または短調(マイナー)
なぜキーが重要なのか
ギタリストにとってキーの理解は以下の理由で不可欠です:
- コード進行の理解: キーが分かれば、楽曲で使われるコードが予測できる
- スケール選択: ソロ演奏で使用する音階を正確に選べる
- 転調の認識: 楽曲中のキーチェンジを把握できる
- セッション対応: 他の楽器奏者との合奏がスムーズになる
キーの仕組みと構造(ギター指板での理解)
メジャーキーの構造
メジャーキーは「全全半全全全半」の音程パターンで構成されます。
キーCメジャーの例:
C - D - E - F - G - A - B - C
ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド
全 全 半 全 全 全 半
ギター指板での視覚化
5弦ルートのCメジャースケール:
|------|------|------|------|------| ← 1弦
|------|------|--●--|------|------| ← 2弦(E)
|------|------|--●--|------|------| ← 3弦(C)
|------|------|--●--|------|------| ← 4弦(G)
|--●--|------|------|------|------| ← 5弦(C)
|------|------|------|------|------| ← 6弦
3f 4f 5f 6f 7f
キーシグネチャー(調号)
各キーには固有の調号があります:
キー | 調号 | シャープ/フラット |
---|---|---|
C | なし | なし |
G | ♯×1 | F♯ |
D | ♯×2 | F♯、C♯ |
F | ♭×1 | B♭ |
B♭ | ♭×2 | B♭、E♭ |
具体例で学ぶキーの判別方法
方法1: 楽曲の最後の音で判別
多くの楽曲は主音(トニック)で終わります。
実例:
- “Let It Be” (The Beatles) → 最後がC音 → キー:C
- “Wonderwall” (Oasis) → 最後がG音 → キー:G
方法2: コード進行から判別
楽曲で最も安定感のあるコード(トニックコード)がキーを示します。
キーCの代表的コード進行:
C - Am - F - G (I - vi - IV - V)
C - F - G - C (I - IV - V - I)
方法3: 調号を確認
楽譜がある場合、冒頭の調号でキーが判別できます。
判別フローチャート:
調号なし → キーC または Am
♯1個 → キーG または Em
♭1個 → キーF または Dm
よくある勘違いと落とし穴
勘違い1: 「一番多く出てくるコードがキー」
間違い: 楽曲で最も頻繁に現れるコードがキーのトニックコード
正解: 最も「安定感」があり「解決感」のあるコードがトニック
勘違い2: 「キーが分かればすべてのコードが予測できる」
間違い: キー内の7つのコードしか使われない
正解: セカンダリードミナント、借用コードなど、キー外のコードも頻繁に使用される
勘違い3: 「メジャーキーとマイナーキーは全く別もの」
間違い: メジャーとマイナーは独立した概念
正解: 平行調(例:CメジャーとAマイナー)は同じ調号を共有する
ケース別Q&A
Q1: 楽曲の途中でキーが変わったらどうするの?
A: これを「転調(モジュレーション)」と呼びます。新しいキーに応じてスケールやコードを切り替える必要があります。よくあるパターンは半音上や完全5度上への転調です。
Q2: カポタストを使った場合のキーは?
A: カポの位置分だけキーが上がります。例:2フレットにカポ→実音は全音(2半音)高くなる。楽譜上キーGでも、カポ2フレットなら実際はキーAで演奏されます。
Q3: 同じキーでもフレットポジションが違うのはなぜ?
A: ギターは同じ音を複数の場所で演奏できるためです。キーGのスケールも3フレット、7フレット、10フレットなど様々なポジションで演奏可能です。
Q4: マイナーキーの判別が難しいのですが?
A: マイナーキーは以下の特徴があります:
- 暗い、悲しい響き
- よく使われるコード進行:i-VII-VI-VII(例:Am-G-F-G)
- 楽曲の終わりがマイナーコードであることが多い
Q5: ジャズやブルースではキーの概念が違うの?
A: 基本概念は同じですが、より複雑なハーモニーを使用します:
- ジャズ: 頻繁な転調、テンションコード、代理コード
- ブルース: ブルーノートの使用、ドミナント7thコードの多用
ギタリスト向け実践ツール
キー判別チェックリスト
楽曲分析時に使える実践的チェックリスト:
□ Step1: 楽曲の最初と最後のコードを確認
□ Step2: 最も安定感のあるコードを特定
□ Step3: 使用されているコード群を分析
□ Step4: スケール音を確認
□ Step5: 調号(楽譜がある場合)をチェック
頻出キーとコード進行早見表
ギターで演奏しやすいキー TOP5:
- キーG: コード例 G-Em-C-D
- キーC: コード例 C-Am-F-G
- キーD: コード例 D-Bm-G-A
- キーA: コード例 A-F#m-D-E
- キーE: コード例 E-C#m-A-B
練習用スケールポジション
各キーの基本スケールポジション(タブ譜風表記):
キーG メジャースケール(3フレットポジション):
e|--2--3--
B|--3--5--
G|--2--4--5--
D|--2--4--5--
A|--2--3--5--
E|--3--5--
用語集
ダイアトニックコード
特定のキーに属する7つの基本コード。キーCなら:C, Dm, Em, F, G, Am, Bm♭5
主音(トニック)
キーの中心となる音。安定感と解決感を持つ
属音(ドミナント)
主音の5度上の音。トニックへの強い解決傾向を持つ
下属音(サブドミナント)
主音の4度上の音。トニックとドミナントの中間的役割
平行調
同じ調号を持つメジャーキーとマイナーキーの関係(例:CメジャーとAマイナー)
同主調
同じ主音を持つメジャーキーとマイナーキーの関係(例:CメジャーとCマイナー)
転調(モジュレーション)
楽曲の途中でキーが変わること
セカンダリードミナント
一時的に他のコードをトニックとして扱うドミナントコード
借用コード
平行調や同主調から「借りてきた」コード
ケーデンス
コードの連鎖による調性感の確立。特にV-I進行は強い解決感を持つ
調号
楽譜の冒頭に記される♯や♭の記号。キーを示す
モード
同じ音階を異なる音から始める音階システム
エンハーモニック
異名同音。例:F♯とG♭は同じ高さの音
クロマチック
半音階的な音の動き
ペンタトニックスケール
5音音階。ギターソロでよく使用される
参考文献・出典
学術・教育機関
- バークリー音楽大学「ハーモニー理論基礎」
- 国立音楽大学「音楽理論概説」
- 東京音楽大学「ギター音楽理論」
専門書籍
- 「ギタリストのための音楽理論」(リットーミュージック)
- 「実践的コード理論」(中央アート出版社)
- 「ハーモニー分析入門」(音楽之友社)
オンラインリソース
- Coursera「音楽理論基礎コース」
- YouTube「Rick Beato – Music Theory」
- Ultimate Guitar「Theory Lessons」
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